One to oneマーケティング・セミナー 1997、11、14

先回のone to oneマーケティングのセミナーでは、電子メールを使ったone to oneの実例をパネルディスカッション風に語られていたが、今回はカスタマイゼイションを主体にしたセミナーで、実務上その業務内容をカスタマイズしている2社の話とone to oneマーケティングの日本での権威の井関教授の講演があった。

車のミニクーパーを専門に販売する㈱ミニマルヤマの丸山 和夫 氏

ミニマルヤマではミニクーパーを扱いだしてから30年くらいの会社で、ミニの販売台数としては日本国内では一番販売力があり、ローバー社とも販売契約をして日本の代理店として80年代には大量販売をしてきたが、代理店としての販売では自社の自由度が少ないため自分の目指す車に仕上げられないので90年代にはいってからは、ローバーの代理店を放棄し、自社で量産のミニをカスタマイズしてマルヤマのオリジナルミニを作ってきている。

この決断に至ったのは、顧客層が変化してきて、同じ形の車を所有する人種から個性的な車を求める顧客が増えてきたことによる。標準車を買っても結局はいろんなオプションを取り付けて元の面影のないほど改良する顧客が増えてきたことにより、カスタマイズしたミニを販売し、その顧客とは一生付き合っていくことをめざして、ローバーと手を切ってきた。よって現在ではマス広告による販売ではなく、顧客が顧客を連れてきて常連になってくれる販売が続いている。

車と顧客の情報は医者のカルテのように紙によってデータベース化されており、過去の顧客4000件のファイルがあり、顧客にも自由に見てもらっている。他の伝票類は全てデジタルデータによってコンピュータ管理しているが、このカルテだけは紙にしている。ただし、2代目になるときにはデジタル化しておかないと2代目が困ることになるとかんがえている。one to oneの顧客データのデジタル管理を目標にしていることになる。

ミニマルヤマの特徴は
1、マルヤマで買った車が何処で事故、故障してもTELでその現場まで取りに行く、その時に請求するのは高速代金だけで、最近では東京から青森まで取りに行ったことがある。
2、修理を行った時にその工賃を1500円/10分で細かく記入し、その中の実際に修理にかかった時間を請求し、顧客にもその明細の説明をしている。
3、日本国内なら個人での部品の注文があれば、2日以内に発送し、顧客が自分で修理する場合は修理マニュアルのFAXサービス、TELによる修理の相談も行っている。
4、持ち込み修理に関しては予約や受け付け等の大手ディーラーのような手続きは不要で気軽に対応している。これができるのは丸山氏が4000件の顧客を覚えているからできることでもある。
5、現在では標準車の改造によるカスタムカーが18種類あり、パーツに至っては2000種類、内装の種類でも50種を数える。
6、年間に2000台の修理能力を持っている。

同じ車を30年も売ってきたこと、モデルチェンジしても基本的にパーツは使える設計になっているため、パーツの在庫を大量にかかえる必要がない。特に長年の修理のバックデータがあるのでどんな部品をどれだけ在庫しておけば良いかが把握できている。これは毎年モデルチェンジするような量産車ではできないことで、共通部品を使い続けているからこそ予測がつく。
例えば春先になると雪の重みでルーフがつぶれる事故によるものが年にこの時期だけ、数件あるのでルーフのパーツはこの時期だけ在庫しておればよい。また、ヨーロッパでは東京ほど信号がないのでエンジンマウントのラバーが柔らかめであってもラバーが損傷するようなことはないが、東京ではストップ&ゴーが多いのでラバーが損傷するので、日本では固めのラバーに変更している。
というふうに交換部品の消耗度が事前に分かるので適数在庫を持てばよいことになる。


シチズン時計㈱ 堀 明浩 氏

シチズンは世界中の時計生産量が年間に11億個なのに対し、年間2.5億個を生産している超量産工場をもっているが、70年代、80年代、90年代と顧客の時計に対する好みが変化してきていることによりマーケットが狭くなってきている。そこで、昨年 限定販売でインターネットから注文するカスタマイズな時計を実験販売した。
先の予測では期間中に1000件の購入があればいいだろうと人員も5名くらいの小規模のものを想定していたが、締め切ってみると9000件もの応募があり、急遽人数を増やし、管理職も強制残業をして対応したそうである。

時計の構成要素は、バンド、ケース、文字盤、絵、バック、針、コメント、等の部分に分けられてそれぞれが20~90種類を用意しそのなかから選んでデザインしたものを8500円~15000円くらいの価格で手作りして発送しようというものである。
この企画のために、新たに3名くらいの工房をつくったそうで、世界最大の生産量を誇る会社ゆえに、一品生産には工場が対応できず今回のような工房を作ることになったらしい。それだけ顧客の好みが多様化してきており、大量生産したものを身につけていれば良いというだけでは対応しきれなくなってきていることを表している。

この時計を作った顧客の反応は、自分がデザインしたものだからひいきめもあるが、ほとんどの人ができた製品を誉めているようだ。更に、身内、友達の中では評判が良いようでまた企画することを望んでいるらしい。つまりリピート性があるということである。
この企画で将来儲けていこうという気持ちはないらしく、あくまで顧客の嗜好を探る実験と話していたがセイコーでも似たようなことはしているので、今後このような顧客の好みを大事にする傾向はつづくものと思われる。ただ、シチズンではこのアイデアを自社の時計についてのみ利用していたが、井関教授によれば、もう一歩踏み込んでこの時計に使った個人のデザインを他のステーショナリーのようなものにも応用する、自社で作らなくても他社と共生することも必要でこうやって広がっていくと、one to oneマーケティングの本筋にせまれると話していた。

慶応大学 井関 教授

先に述べたミニマルヤマの例では商品の価格が高いので単品であっても、one to oneがなりたっているが、シチズンのように単価の安いものでone to oneをやろうとすると無理がでてくる。よって、単価の低いものにあっては商品の種類を増やすことによってone to oneマーケティングが成り立つ、ただし自社で種類を増やしていくことは生産ライン上無理もでてくるので、その場合には他の業種と共生関係を結んで業連という形態をとることによって可能になってくる。

マスマーケティングの時には1つの商品をより多くの顧客に販売することが目的であったが、one to oneマーケティングでは、限定された顧客(今現在保有している顧客)に対して顧客固有の課題に答えられるように多品種の商品を用意することになる。
この2つの形態を考えてみると、1つの商品を買ってもらう顧客をさがすのには相当のコストが掛かる上にその顧客数には限界がある。しかし、限定された顧客数であっても、他業種と連携することによって商品群はいくらでも追加することができるので売上高としてはone to oneマーケティングの方が大きくなってくる。しかも一度商品を買ってもらったことがあるということはその会社に関しても新規顧客よりも理解があるので、企業姿勢が正しく、コンセプトが間違っていなければ、次の商品を買ってもらう確立は新規顧客よりもずっと高くなり、しかも新規獲得の為の費用が掛からない。

ホシザキの例で当てはめてみると、ジュースの自販機から出発して製氷機、冷蔵庫、食洗と、厨房業界、特に一般飲食店に顧客を限定してその顧客の固有の課題から、さまざまな商品をカタログにのせられるようになってきた。飲食店で機械が長期間停止することはそれはその店の営業が停止することになるので、真っ先にサービス体制を全国に作り、顧客の対応を行ってくることにより、顧客の信頼を獲得してきた。これはone to oneマーケティングの神髄そのもので更に会社が大きくなるに従って商品群を増やしてきたが、自社で開発から生産まで全てやってきたので、新しい商品の開発に関しては種類が多すぎて手が回らなくなってきている。企業規模を更に大きくしてもっと商品群を増やすのも一つの生き方ではあるが、同業他社や異業種の会社と組んでホシザキの提案、仕様でアウトソーシングすることも考えていく必要があるだろう。本来one to oneマーケティングという姿勢を意識せずにでもやってきたユニークな会社であるがゆえにこれはちょっと目先をかえることにより可能になると思う。

企業対企業での商品課題の追求についても、単に今ある商品をホシザキで作っていくのではなく、相手企業の考え方から一緒になって全体のシステムを考慮した上で機械に落していかないと非常に使いにくいものになってしまう。そんなときホシザキで作のが適当でないと判断したら、適当な会社を捜してそこと関係を持ちながら顧客の望んだ形にしていかないと全てをホシザキで生産することを考えるのは無理な気がする。
今の製品にしても部品単位では他社の部品とホシザキの技術をドッキングして1つの機械に仕上げているので、決して不可能なことはないと思う。

ステーショナリーのPLUSでは、商品を注文すると次の日には届く、「アスクル」というシステムを開発し各企業の事務系のところに御用聞きのようにして、自社製品のオーダーをとっていたが、顧客から文具だけではなく、お茶葉やその他事務所で使うものはみんな扱って欲しいということから、他社商品もカタログに載せてきた。ところがある時期になってそれまでの注文状況を一覧してみると、売上に占める自社製品よりも他社製品のほうが多いことから、普通に考えると「そんなものは止めてしまえ」ということになるが、このPLUSという会社では、自社製品の割合が少ないのは、他の商品に比べて自社品の完成度が顧客の要望するものに追いついていないから、と、商品開発により注力するように指示をした。他社と共生しながらも、自社のレベルを向上させている。

次にミスミの話がでたが、ここは我々の土俵である飲食関係にも最近進出しているので、ご存知の方も多いとおもうが、one to oneマーケティングセミナーの事務局では今までミスミの話はなく、情報も入手していないとのことで、井関さんから事務局に対して早急に手配するようにと、激が飛んでいた。

というのはこのミスミがone to oneマーケティングを完成度の高いものに仕上げているからで、その生立ちを簡単に紹介すると、ミスミは元々、金型を作る会社であったが、その商売相手の中小企業では、いろんな小物商品をいろんな会社に発注していることが分かり、特に多量に使う商品に関しては特に問題はなかったが、少数のものに関しては夫々の会社に個別に発注しており企業としては煩わしく、伝票形式も各社用のものがあったりしており、そのための業務だけでも煩雑になっていた。さらに、そういう小口物件の市場率が何と半数ちかくもあり、残りの大口物件に関しては大手の商社が入っているので今更太刀打ちできない。そこでミスミでは上記小口の物件について、ミスミが一括受注し、メーカーにミスミが発注し、宅配業者が顧客に配達する。という商社的な事をやりはじめた。
この取扱い商品をその後の調査で広げていき、今では飲食関係の食材から箸、メニューに至るまでを少数の注文からでも受けるようになった。顧客としてはミスミに発注すれば何でも揃うので個々に発注する煩わしさから解放されるとともに、1品からでも配達してもらえるので極端な在庫を抱える必要もなくなってきた。これは顧客の抱える課題をそのまま解決できるもので今後の物流はこの流れになってきている。

極端な例をあげると、ミスミでは明日どうしても現場でドライバーが1本必要ならTEL1本で350円のドライバーを500円の送料を掛けてでも届ける。ここに顧客とミスミの信頼関係が作られて以後この顧客はミスミと親密に付き合うようになるだろう。今までこうやってミスミと付き合ってきた中小の企業はミスミと付き合うことにより、将来の自社のあるべき姿が見えてくるといって、ミスミから離れないそうだ。

one to oneマーケティングの考え方は先日セミナーのあった、中京大の日比野教授のブレイクスルー的発想と同じであり、マスマーケティングをブレイクスルー思考で解いた新しいマーケティング手法の一つがone to oneマーケティングである。
よって、one to oneマーケティングでは顧客はビジネス上の資産であって対象ではない、つまり、顧客に一方的に商品を宣伝し、売りつける今までのマスマーケティングに対してone to oneマーケティングでは顧客と一緒に考えていく、顧客と双方向の関係にあるのでその顧客は資産であり、顧客自身の中に次のビジネスが存在していると考える。よって、顧客を知り尽くすことが先ず最初に必要になってくる。後は顧客とのコミュニケーションを継続していくことによって、顧客と共に成長していくのがone to oneマーケティングである。

公平と平等という言葉があるが、今までのマスマーケティングでは大量生産した同じ機械を顧客に平等に提供していたが、ブレイクスルーの定義にもあるように、顧客の持つ課題は夫々同じではなく顧客固有のものであり、その顧客に対して平等に商品を提供することは不公平な扱いをしていることになる。公平な扱いとは各顧客に対してその顧客にふさわしいものを提供することであり、それは同じ業種であっても本来違うものである。

電通リサーチ 伊藤 元喜

顧客満足と最近の動向について、特にアメリカでのCSの取組みと変化についてのコメントがあった。
元来アメリカでは接客業の人の資質が良くなかったために一時期、マニュアル化の方向が猛烈に進み日本でも外資系の企業からマニュアル指向がねずいてきた。しかし、一当たり人の資質が向上してくると、より高度なサービスが要求されるようになってきた。つまり、顧客の要求する満足度がレベルアップしてきているのである。それと、マニュアルをまもらせることにより、底辺の質は向上したが顧客に対して、どの顧客にも同じ態度で接するためにかえって顧客にとっては不満足な結果になることも生じてきた。

そこで現在のアメリカでは、マニュアルはなく新人に対しては先輩がマンツーマンで基本から教え、例えばデパートの店員であれば自分の売り場だけでなく他の売り場も経験させて専門家を作るのではなく臨機応変に顧客からの課題に対応できるような、人作りをしている。以上がノードストームというアメリカのデバートのやり方である。

ディズニーワールドでもやはりマニュアルは廃止しており、アルバイトであっても最初に、企業イズム、企業としての主義、主張やコンセプトをきっちり教え込む。その上でワールド内の顧客全部を相手するのではなく、その瞬間に対応している一人を全力で相手するように教える。その後現場に配置されてからは、何か問題があってもそれに応対した本人の自由裁量で判断していいように権限を持たせている。今までだと事ある毎に責任者の指示を仰いでいたのだろうが、その時間的なロスもないので対応が早くなる。更に、お客様は神様ですと言う風に、一方的に顧客にへつらうのではなく、ゲストが常に正しいとは限らないこと、がゲストは立てることを教えている。

以上のように担当者の自由裁量でやらせる替わりに、本人のやる気、励みを出すためのバックアップシステムをきちんともっている。例えば、売上の多かった人には商品を出すとかのタイムリーな方法をとっている。
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# by tadasue3 | 2001-02-27 06:00

初代シルビア


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